ブロードウェーの巨匠スティーヴン・ソンドハイム作詞・作曲の傑作ミュージカル(ヒュー・ホィーラー脚本)。原作はイングマール・ベルイマン監督の映画「夏の夜は三たび微笑む」(1955年)で、物語もほぼそのままだ。
女優デジレ(大竹しのぶ)と弁護士フレデリック(風間杜夫)はかつて恋人同士。彼には、年若い後妻アン(蓮佛美沙子)と息子ヘンリック(ウエンツ瑛士)がいる。期せずして彼らはデジレの母(木野花)の館で週末を過ごすことになる。そこへ、デジレの愛人マルコム(栗原英雄)とその妻シャーロット(安蘭けい)も合流。それぞれの思惑が絡み合い、いくつもの恋の騒動が繰り広げられる。
冒頭の曲「ナイトワルツ」のメロディーが随所に顔を出し、物語を紡いでいく。エレガントな音楽に導かれるのは、これまたエレガントなコメディー。愚かしくも愛すべき人間たちのあがきや営みを、慈しむように描き出した粋な作品である。
名曲ぞろいだが、なかでも「センド・イン・ザ・クラウンズ」はとびきり。これを、大竹が滋味豊かにじっくりと聞かせる。風間は、歌唱にいまひとつ感があるものの、芝居になると俄然光彩を放つ。安蘭が演技、歌唱とも安定して魅力的。彼女と栗原の軽妙なやりとりが、笑いを弾けさせて楽しい。メイド役の瀬戸たかのも印象に残る。
それにしても、ソンドハイム作品の訳詞は難しいと、つくづく。遊び心あふれる詞と、曲が分かち難く結びついているからだ。今回の新たな訳詞(高橋知伽江、翻訳も)も、工夫と苦労を重ねた跡がみえる。それでもと思うのは、ないものねだりだろう。マリア・フリードマンの演出はそつがないぶん、やや平坦か。ティム・ジャクソン振付。

(萩尾瞳・映画演劇評論家)
朝日新聞 日刊 4月26日 承諾番号:18-2125
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