東宝ミュージカルアカデミー 稽古場レポート Vol.9
BACK NUMBER vol.1/vol.2/vol.3/vol.4/vol.5/vol.6/vol.7/vol.8


デヴィッド・ルヴォー氏ワークショップ
「ナイン the musical」

12月18日から23日の5日間、私達アカデミー生は演出家デヴィッド・ルヴォー氏のワークショップを受けられるという、大幸運に恵まれました。               今回は私、岡村さやかがその稽古場の様子をお伝えいたします。

前もって頂いた「ナイン」の台本と、4曲の楽譜。今回はこの4曲とその前後の場面を一部抜粋してやることになりました。

まずはワークショップに先立ち、ビリー先生(山口e也先生)に歌稽古をして頂きました。
今まで練習してきた曲とはまた大分雰囲気が違い、アカデミー生新境地開拓の予感です。
そして、演出助手としてワークショップに携わって下さいました砂川幸子さんに、作品について、またルヴォー先生のワークショップを受けるにあたってなどお話をして頂きました。期待はどんどん高まります。


ワークショップ初日!ルヴォー先生の質問「一番好きなミュージカルは?その理由は?」に一人ずつ答えます。じっと目を見て話を聞いて下さる先生。緊張しつつもその優しい笑顔に、ワークショップは明るくリラックスした雰囲気でスタートしました。



みんなで大きな円を作ってエクササイズです。はじめは、順番に隣の人にエネルギーを送るエクササイズ。「止めないで、自分でコントロールしようとしないで。一つのことに巻き込まれている感じ、分りますか」楽しいエクササイズの中にも、貴重なヒントが隠されています。


このようなエクササイズは5日間毎日授業の始めに行われました。中でも私が一番好きだったのは、「相手に与えることでつくる即興のようなもの」と説明して下さったエクササイズです。それは、みんなで作った円の中心に誰か一人が出て来る、そこへもう一人別の人が出て来て、「前提を含んだ質問」(例えば、相手が犬を飼っているという前提を含んで「お宅の犬は元気?」など)をすると、質問された方は咄嗟にその場で答える、というものです。質問された方はその前提を否定せず且つ出来るだけ素早く答えます。
自分ひとりで何かしなきゃ、ではなく、相手に何かを与えることでその場を生きることが出来る。本当に興味深いエクササイズでした。この他にもユニークなエクササイズを色々教えて頂きました。


いよいよ「ナイン」に突入。曲の分析について教えて頂きながら、実際に歌い、アドヴァイスを頂きます。「どこでその言葉(歌詞)を思いつくか。言うそのときまで思いついていない。今言っていることを考えているうちに違うことが言いたくなる…考えが発展していく」曲の中には、歌っている人物の目覚めや発見があり(歌詞だけでなく音楽的にも)、それによって世界が大きくなっていくという行程などを、曲の流れに沿って具体的に分析していきます。



そして、次の日からは曲につながる場面の台詞も併せて材料とし、生徒の考えを聞きそれについてのコメントを交えながら分りやすく解説して下さいました。全く思い至らなかった解釈や、表現方法に目から鱗が止まりません。


そして先生が、登場人物の感情や置かれている状況についてのイメージを次から次へと提示して下さることで、その曲(場面)の世界が様々な角度から見えてきます。アカデミー生は何とかそれを表現しようと踏ん張ります。


先生は、当てられて前に出てきた生徒をとにかくリラックスさせようと、色々なことをなさいました。「演技しなくては…」と身構えるのではなく、「そこに生きて呼吸をする」「言葉を言う意志を見つける」ために、床に寝転がせて足を持ってひっぱる、お散歩のように手をつないで一緒に歩き回るなど。気が付けば、活き活きとした声と表情に!その人の内側にあったものが外に現れてくるのが見える感じです。


私達生徒の考えや表現方法をほとんど否定せず認めた上で、「それも一つのやり方だね。ではこんなやり方はどうかな」「こうやって言うことは簡単だけど、やるのがどれだけ難しいかはよく分かるよ」とおっしゃる先生。演じる側が今どのような状態か、まるで隣に寄り添い考えて下さっているようでした。



あっという間に最終日。エクササイズ、場面の分析実践と続き、ラスト2時間は課題曲のうち好きな1曲を選んで順番にどんどん歌いました。しっとりとした曲、パワフルな曲、アカデミー生の個性炸裂です。



そして最後の最後、再び大きな円になって、「あなた達がこの道を目指したことが本当に素晴らしいことだと訴えて下さい。そして私にそれを信じさせてください」という先生の胸に突き刺さる素敵な言葉をイントロに全員で「グイードソング」を熱唱。グイードが自分のやりたいこと全てを目いっぱい言い尽くすこの曲は、もしかしたら私達の未来へ抱く思いと強くつながっていたのかもしれません。

「自分が自分であることを尊重する」「ある役をやるとき自分自身の存在をけずらない。自分の持てる限りの人間性を存分に使うということの大切さ」という先生の言葉は私にとってとても衝撃的でした。
役者として、そして人として、根っこの部分に強く触れた5日間。このような貴重な時間を、かけがえのない仲間と一緒に噛み締められたことを深く感謝します。必ずや、このワークショップで得た全てを糧に成長して参りたいと思います。



最後になりましたが、演出助手をして下さいました砂川幸子さん、通訳をして下さいました薛珠麗さん、ピアノ伴奏をして下さいました若林優美さん、改めましてデヴィッド・ルヴォー先生!!本当にありがとうございました。

この度のワークショップで新境地を開拓したアカデミー生は、いよいよ卒業公演に向け一層邁進して参ります。
引き続き今後にどうぞご期待ください。

長く拙いレポートに最後までお付き合い下さり、ありがとうございました。

Copyright 2006 Toho Co.,Ltd.All rights reserved.