レポートREPORT
トークショー・レポート(後編)

11月2日(日)、姫路文学館にて開催されたクロストーク「越境する<十二国記>―ミュージカルで表現する物語」、レポート後編です。
山田先生の洒脱な言葉運びと、熱意あふれるスタッフ陣のコメントでトークショーが盛り上っていく中、話題は、ミュージカル関連へと移りました。
今回、トークショーの登壇者にはミュージカルのカンパニーウェアである黒のジャンパーを着用してもらっていたのですが、その背中に、「十二国記 -月の影 影の海-」の東京、福岡、大阪、愛知、の公演日程がプリントされていたため、MCが公演の説明を始めるや、なんと山田先生が自ら、くるっとお客様に背中を見せてくださる、という一幕が。
そして、トークショー開始前から壇上の真ん中に置かれていた、中嶋陽子の衣裳、ボロボロの制服の話に入っていきます。この制服は、十二国の世界に渡った中嶋陽子(ミュージカルでは”ヨウコ”)を演じる柚香光さんが、扮装写真の撮影の際、実際に着用したものです。

この制服を、時折指し示しながら、中原さんが、驚きの衣裳制作秘話を披露してくれました。
「”(原作上巻の)表紙の写真が撮りたいんです”っていうのは、最初から言われていたので、まず、山田先生が描かれたこの(上巻の)画を見て、何がどうしてこう(ボロボロに)なったのか、っていう考察をするところから始めました。
小説を読み返して、ここで蠱雕に襲われて、とか、ここで饑饑に襲われてとかってあるじゃないですか、流れが。で、海の中に落ちたり、馬車から転がって地面に叩きつけられたりって表現があった時に、実際に−―この制服じゃないですけど、セーラー服を自分で着て、アシスタントに動画を撮ってもらう、っていうのをやって。本当にアザを作りながら、高いところから、モーションキャプチャー!(笑) 要は(実際やってみると)、”こう落ちたら、自然とこういう受け身を取る”ってわかりますよね。そうなると、”ここは、こういう布の破れ方になる”って考察ができる。”爪”なら”引っ掻かれたんだ”とか。”牙で裂かれた”なら、牙に近いもので裂いてボロ加工したりしました。自分で動いてみると、”だから、ここが破れるんだな”が体感できて、山田先生の画の説得力を、身をもって実感しました」
これには山田先生、
「だんだん、おやりになる作品が過酷にならないことを」
と苦笑されていました。
中原さんの制服制作秘話は、まだまだ続きます。
「この制服は、撮影の時はもっと汚れていたんです。撮影から結構時間が経っているので、今、かなり綺麗になっちゃってるんですけど。最初の撮影の時は結構”悲惨”な仕上がりでした。本当にもっとボロボロだったんですよ。汚しに、ペンキとかは使わずに、取ってきた土とか埃をこすりつけたりっていう作り方をしたので、生地に刷り込まれている部分しか、今もう残ってなくて。
それから、見えないところですが、汚す箇所によって芯地の種類を変えてまして。芯地−―生地、布をしっかり見せるために糊が貼ってある薄い布で、スーツとかのしっかりしたものを作る時に、肩とかのラインを綺麗に出すのに使ったりします。普通、セーラー服は芯地を使う場所がそんなにないんですよ。スカートも、芯地が貼られてないただの布。布1枚だけでプリーツっていうのが多いんですけど、それを(この衣裳で)やってしまうと、ボロ加減がペラペラに見えるというか、重さがどうしても出にくいんです。それで、表地と芯地の組み合わせを何パターンか作って、Aの組み合わせだとボロボロ具合はこうなる、Bだとこう、っていうのを検証しました。同じナイフとかヤスリで削っても、組み合わせによって風合いが全く違ってくるので」

トルソーに着付けた制服に触れながら、細かく説明する中原さんの手元から、ある瞬間、ポロっと何かが落ち、MCも「今、何か…」と驚いた様子。なんと、制服のボロボロに加工された部分が少し、取れてしまったのです。
「すぐね、とれちゃうんです(苦笑)」
このこだわりについて、山田先生からは、
「僕も実際、(制服の)後ろ側までは想像してなかった部分とかもあって。アングル的に、身をひねったところは描いてるんですけど、立体として捉えてたかっていうと、(表紙の)画を描く時にはそうじゃなかったかもしれないなって。それを補ってくださってるというか、”こうだったんですよね”って結論をいただいてて。
本当だったら乾いた血糊が付いてたり、イバラの森みたいな、茂みみたいなところを抜ける時に、あちこち切り裂いて傷だらけになってただろうな、というようなところまでも、すごいストーリー性を与えていただいててビックリです」

この日が初めての実物公開となったヨウコ制服は、トークショーの後、11月5日からミュージカルコーナーに追加展示されることになりました。中原さんは、
「リアルにし過ぎてもよくないので少し抑えてはいるけれど、写真ではわからないような細かい加工もあるので、展示で、もしよろしければ近くでじっくり見ていただけたらな、と思います」
そして、この制服とともに、上巻表紙を再現した書影オマージュビジュアルで話題となったのが、柚香さんが手にする慶国秘蔵の宝重、水禺刀と碧双珠です。竹谷さんが、デザインと造形を担当しました。

「最初にお話をいただいた時、山田先生のことは存じ上げてたので、”これは山田さんがやった方がいいんじゃないですか?”って、かなり抵抗したんですよ(笑)」
なんでやねん、と突っ込む山田先生。
「妖魔もラフ画をやらせていただいたんですけど、これも、”山田先生がやった方が”って。実際、妖魔の画を描かれてますしね。そのイメージっていうのはやっぱり、ありますから。それがどういうわけか、僕がさせていただくことになって(苦笑)。
で、そうこうするうちに、扮装写真を撮るので水禺刀が必要になり、造らせていただいたんです。(上巻の書影を)同じアングルで写真で再現することが決まってたので、山田先生のあの画を分析して解読して。ここ、こうなってるんじゃないか?みたいな。ちゃんと水禺刀に見えるような立体化を、すごく心がけました」
水禺刀は、実際に持つ柚香さんの身長も考慮して大きさを決めだのだとか。
「身長をうかがって、全体のバランスで長さを決めました。ただ、剣は(撮影の)現場でその場で大きを調整できないので、少し大きめという感じで造ってます。撮影する時にレンズは何を使うか、画角はどうなるかでも(必要な)長さは違うので、その場でうまく対応できるよう、極端に大きくしたりはしないようにはしましたけど。楽しんで造らせていただきました」
山田先生は、具現化された水禺刀と碧双珠の感想を尋ねられ、
「細かい金具とかにも全部デザインが施されていて。(画を)かなり、アップにして見ないと判らないところだと思うんですけどね。あと、碧双珠がマーブル状になってて」
ここで壇上後方のスクリーンに、展示中の水禺刀の写真が映し出されます。
「根本の金属とかもデザインが施されていて、造り手の意識が入ってないところがないので、本当にすごい。立体物でこれは大変でしょう?」
この山田先生の感嘆のコメントに対して竹谷さん、
「立体(のパーツ)は、作らなくても結構売ってるもので構成できるんです。金属とか真鍮製のところは買ったものも使ったりもしています。
碧双珠は、本当はやっぱり”玉”、石であるべきだと思うんですけど、それを樹脂で造るにあたって、樹脂の質感って石に比べると軽く見えることが多いので、透明の樹脂で形作って、色は一色じゃなくて何色か乗せたり、(立体的な模様の)溝に汚れやなんかが溜まるような塗装にしたりとか、していますね」
加えて、柚香さん扮するヨウコのビジュアル撮影エピソードを、ディレクションを務めた羽尾さんに語ってもらいました。スクリーンに映った原作上巻の書影とそのオマージュビジュアルを眺めつつ、ヨウコのポーズについて、
「柚香さんには、実はものすごく体幹が必要なポーズをお願いしてるんですね。イラストでは、顔・背中・腰・スカートの見え方がポイントになってるんです。普通に立って下からあおれば撮れるんじゃないかな、って思うかもしれないですが、そうすると、肩で顔が半分ぐらい隠れてしまうし、こんなに腰が前に来ない。なので、柚香さんには、肩甲骨を締めて左のお尻をガッとカメラの方に捻り、かつ、そのままカメラに向かって前傾することで顔を見せる、という、かなり大変なポーズを取っていただいたんです。柚香さんは体幹鍛えてらっしゃるので、”全然大丈夫ですよ”と笑顔で言ってくださって、もう感謝しかなかったんですけれども。
で、中原さんの衣装の補足になりますけど、この(とスカートの裾の切れ目を差して)−−この切れ方が、ちゃんと再現されてるんですよ。完全再現というのは普通はあまりなくて、私たちがレタッチで調整することが多い中で中原さんが完璧に創り上げてくださってたので、しっかりと映る角度で撮りたいわけです。ということで、柚香さんに本当に大変なポーズを強いながら撮らせていただきました。碧双珠も柚香さんが、しっかり見えるよう指で支えてくださってます。
それから、背景ですね。中国の山を調べまくって、”あ、この山、(山田先生の表紙画に)すごく似てる”っていうのを探して合成して。山田先生の、美しい霧にかかって消えていくような表現っていうのも再現したくて、下の方のグラデーションとかも、”ここは霧がこういう風に入ってきてるから、こうやって消えていくんだ”っていうストーリーを考えながら作っていった、というところがあります」
ここで中原さんからは、スカートの丈について追加説明が。普通に立って正面から見た時にバランスの良い長さ、で制作するが、予想される撮影のアングルを踏まえると丈が短いと言われるかと思い、”ボロパーツ”を何パターンか作って撮影に臨んだそうです。
「この、ボロボロの部分だけのパーツを何個も作って」
じっと制服を眺めたMCから、「あ!付いてます!」と声が上がります。
「撮影の日、”もうちょっと(切れ目のところ)長くできますか?” “できます!”ってススっと。で、パーツを足しながら試し撮りしてもらって確認してを繰り返して、”ここ、もうちょっと追加しましょうか?”みたいな感じで調整していきました。なので、裏を見るとわかるんですけど、ツギハギなんですよ。追加で付け足した布が、結構ある。
とにかく、絶対に山田先生の画を再現しよう!っていうスタッフ陣の意気込みが、すごかったです。山田先生の画には全て意味があるから!っていう」
撮影に参加していた竹谷さんが、その際の感想などを求められて、
「夜中まで(撮影を)やってました。僕は、僕のパートがなんとなく終わったところで、翌日締切あったんで、実際に(水禺刀を)造作してくれた谷口くんを残して一人で帰っちゃったんですけど(苦笑)。みなさん、とっても熱心に、こだわりを持って何カットも何カットも。あれね、撮りたくなるんですよね、何カットも。必要ないカットまで撮りたくなりますよね」
撮影時、柚香さんは仕事で、当日夕方着のフライトで海外から長時間かけて帰国。その足でスタジオ入りされたことに竹谷さんが言及すると、中原さんも、
「衣裳とかヘアメイクとか、そのポーズを取ったまんまで直さないと意味がないんです。だから、このポーズを取ったまま1分ぐらい。私とかヘアメイクとかが、”ちょっとここ、直しますね”とか”この角度かもしれない”とかって、その場で縫ってみたりもして。その間、柚香さん、微動だにできなかったんです」
と、疲れもみせず笑顔で撮影にのぞんでくれた柚香さんの苦労をしのんでいました。
次から次へと話は尽きない中、MCから、現在、稽古場では1幕が形作られ、2幕の稽古に入っている、というミュージカルの進捗状況が語られます。
そこで羽尾さんの、次なる『十二国記』エピソードが出てきました。
「大学で劇団を一緒にさせていただいていた先輩が、なんと、本公演の脚本・作詞を担当されている元吉庸泰さんなんです! スタッフが発表されて、ご連絡いただいた時にはビックリしました」
この日、実は元吉さん、時間ができたので、と姫路に足を運んでくださり、客席でトークショーを楽しんでおられたのです。事前に、「何があるか解らないので、万一のため。ホントに念の為です!」とピンマイクとスタッフジャンパーをお渡ししておいた甲斐があり(笑)、羽尾さんとMCに促されて、その場で立ち上がってご挨拶、となりました。

「脚本と作詞をしたためさせていただきました、元吉庸泰と申します。みなさまの『十二国記』を立体的にしていくお話を、本当にもう、”なんて感動”って思って聞いてました。私としては、”神様”山田先生にお会いできて−―『ロードス島戦記』(コミック)からずっとファンでございまして、なんと感慨深い、と−―鼻水が出てきました(笑)。すみません」
とお客様を笑わせる一方で、
「Audible、出ましたよね。『月の影 影の海』上巻だけで数時間ございます。それを3時間ほどのミュージカルにするので、あれがない、これがない、は全部、私のせいでございます、はい、申し訳ございません」
と”謝罪”の言葉も。
以前から小野先生作品の大ファンである元吉さんとしては、ここは外せない、あそこはこうしたい、でも全部詰め込むと時間が足りない、と頭を悩ませながら、原作愛にあふれる初稿を仕上げてくださいました。そこから、さまざまなスタッフの意見を踏まえ、何度も何度も言葉を足したり引いたり。
再稿、再々稿とリライトを重ねていただいた末に、ようやく公演用の台本が仕上がりましたが、実際の歌稽古・立ち稽古での模索で、今も修正は続いています。
最終的にどのような台本になるか、みなさん、ぜひ劇場で目撃していただければと思います。
トークショーの残り時間も少なくなり、本番に向けてのクリエーター陣の現況に質問が及びます。
中原さんは、
「山田先生の画は、風になびいた時のボリューム感とか、すごい美しいじゃないですか。この布なびきって永遠のテーマで、私の中で。イラストのようになびかせたいなっていうのがあるので。山田先生が見た時に納得していただけるように、今もずっと頑張っていますが。 あとは、甲冑だったり水禺刀なんかは竹谷さんや他の方にお願いしましたけど、それ以外のお面とか冠とか、人が着るもの身につけるものはトータル的にデザインをさせていただいてるので、そういうところも見ていただけたらいいなとは思います」
ここでMCから、
「今日、(姫路城前の広場では)陶器市と姫路のレザーのイベントをやっていたんですが、そこで中原さん、いい出会いがあったとか」
「姫路城を見に行きたかったんですが、催し物をやっていて、お城にたどり着く前に時間が終わっちゃって。(今回の衣裳素材として)宝の山で、すごいいっぱい買い込んで。そしたら、竹谷さんも」
「(文学館に)来る時に見つけて、鹿の皮を買ったんですよ」
鹿の皮を抱えて文学館に現れた竹谷さんですが、水禺刀以外のところとしては、
「主に妖魔関係を担当してまして。ただ、実際舞台で使用するものは別の方に作っていただくので、僕としては−−だいたい舞台って、最初の方は何も決まってないことが多いんですよね。人間が着込んで出てくるのか、クレーンで作りつけて出てくるのかとか。(今回も)あんまり決まってなかった。なので、その提案、みたいな。クレーンにつけてこんな感じはどうでしょう?とか、人がパペットっていうか造作物を操作しながら出てくるのはどうでしょう?とか。そんなことを、何も決まってない段階で、ざっくり描いたラフで提案をさせていただいたりの画が多かったです。楽しんでやらせてもらってますね」
羽尾さんは、webでも公開されているプロモーション映像をスクリーンで流しながらのお話になりました。
「キャストの影がキャラクターの形になってます。陽子(日本の高校生としての中嶋陽子)は三つ編みとか。景麒は髪のなびくのが見えるシルエットにしたり。宣伝用に黒い衣装で撮影したんですけど、シンプルに出すだけじゃなくて、何か仕掛けができた方がいいんじゃないかということで、東宝さんの方からアイディアを頂きまして、影をちょっとキャラクターにしてみるのは面白いですね、って。あと私は、宣伝デザインとパンフレットのデザインもやってまして。今回の展示を見させていただいて、こういうことをパンフレットに活かしてもいいんじゃないかなっていう刺激を頂きました。素敵なパンフレットができれば、と思っております」
山田先生には、ミュージカル化、とお聞きになった際のお気持ちをうかがうことに。
「舞台化と聞いて、その時は”やれんの?”って思って。どこまでやるの?って。本当に形になってきてるみたいで、ビックリしております。いろんな才能が結集して、普通に考えたら”そんなもん、できないだろう”と思うようなことをやってしまうのがこの業界なので。僕はできるだけ予断を与えないように、みなさんがお作りになったりアイデアを出される前に余計なことを言わないように、と、それを心掛けております」
そんな山田先生は、羽尾さんから出たもう一つの質問、
「妖獣のデザインは、どういった形で発想を出されてきたんでしょうか?」
に、
「(原稿に)書いてある通りに描けば、ああなる。基本的に、キャラクターもそうなんですけど、書いてある通りに描けば、大体、あんな風になるんですよ」
とさらっと返された後、続けて、
「妖魔は、『山海経』とかにある部分は、できるだけ原典を調べて、それに少し生き物感を出して描きました。実は、僕はどうしても書きたかったのに挿画として書けてなかったものがあって、画集の『青陽の曲』の最初の見開き、妖獣大集合みたいな画の一番下にチラッと、賓満を描いてあります。ずっとヨーコと同化してるので描く必要がないし、アニメでは出てきたんですけれど、あれは僕はデザインしていなくて、で、あのイラストで初めて描きました。
資料があるものについては、資料にできるだけ忠実に書こうと思ってるんですけど、(明確な)結論があるわけではないので、その辺のところは自由にやらせてもらってます。人間描くより楽です(笑)」
このコメントに反応したのが、竹谷さんでした。
「こう言っちゃ失礼かもしれないですけど、やっぱり、”上手い”としか言いようがないというか。人間もそうですよ。細かい表情だとか、すごい読み取れる。僕としては、普段、化け物関係のデザインをしたり作ったりすることが多いので、ついついそっちばっかり見ちゃいますけど(苦笑)。
僕が好きなの、もう一個あって。カバー裏に書かれてた、紋章みたいなシリーズがありますよね。あれがすごく好きで。ああいう紋章化、どう説明していいかわからない魅力がやっぱり、本当の古代のものではなく、ちゃんとアレンジされてて、すごい魅力的なんですが、その辺も伺いたいですね」

「あの、表4(裏表紙)の部分には、本編にあまり登場してないんだけど重要なキャラクターとかを描く場合もあるだろうと思うんです。(『十二国記』の場合は)世界観を補強しようってことで、担当さんと話し合って。それは、風景とかを描くんじゃなくて、意匠のペダントリーというか、そういうものを創った方が、世界観の補強になるんじゃないかって。現代にもありそうだなと思いましたけど、そのおかげか、グッズは作りやすかったみたいですね。
いろんな人間が生きていると、いろいろデザインが生まれてくる。人間がず〜っと延々積み上げてきたものって、デザインの集大成なんだろうな、と。やっぱり、誰かの意識とか、たくさんの民族とか国家なんかの意識みたいなものがあるんだろうな、と思いました。そういった、誰かが作った、誰かが思惑で何かをしたっていうことの集大成みたいなものが”世界観”だと思うので、そういうものは大事にして創ってます」
そしていよいよ、終わりの時間が近づき、MCは、
「『十二国記』やミュージカルへの想い、あるいは、トークショーの感想など、一言ずつ伺って、この会を締めたいと思っております。それでは、羽尾さんから、よろしいでしょうか?」
「この作品に関われたこと自体が奇跡なのにもかかわらず、こんな素晴らしい機会をいただき、本当に嬉しかったです。
これから本番が近づいてまいりますけれども、スタッフ一丸となって良い本番が迎えられるよう準備を進めていきますので、みなさんも是非、よろしければ観にいらっしゃってください。本日はありがとうございました」
次に竹谷さん。
「僕も、今日初めて山田先生にお会いすることができまして、本当に光栄でございます。本当に、過去、というか、昔の若い時の自分に教えてやりたいですね。
僕もミュージカル観劇を楽しみにしています。(これからも)やることあったら、ご遠慮なく言ってください。楽しみにしています。みなさん、今日は本当にありがとうございました」
そして、中原さん。
「本日はありがとうございました。
この仕事のお話をいただいた時、私、真っ先に竹谷さんに、”お願いします。絶対に竹谷さんの世界観に合うので、是非お願いしたいです!”って連絡して。そしたら普通に”あ、やります。丈夫です、山田先生好きなんで”みたいな感じで(笑)。それくらい、スタッフの中にもこの作品の大ファンだっていう方が多いんです。
今、みんな一丸となって、愛を持って、この世界観をどうやったら具現化して、みなさんが納得するものを届けられるのかっていうのを一生懸命やっているところです。きっとみなさん、楽俊がどうなるんだろうっていうがずっと気になってると思うんですけど。それは”お楽しみに”って。
ちゃんと良い初日をお届けできるように頑張っていこうと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします」
締めくくりは、やはりこの方、山田先生です。
「ミュージカルは僕、いろいろ聞きたくなくて、知らない状態で見たくて。でも多分もう、それは無理だろうなと思ってます(苦笑)。
”あなたの止め画が立体化する/動くことについてどう思いますか?”みたいなこと、よく聞かれるんですけれども、本を創って出して、読者さんが読んだ時点でもうそれは、みなさんのものになっちゃうので、あとはもう、”どうでもお好きなように”っていう感じなんです。
僕の中からだけ生まれる解釈ではないものを見るのは、本当に楽しくて、純粋に観客として楽しく拝見、観劇させていただこうかなと思います」
山田先生のお言葉の後は、元吉さんも呼び込まれての記念撮影。客席の皆さんも撮影OKだったので、「こちらお願いしま〜す」「目線上手で」「次は真ん中です」等々、メディアの会見でのフォトセッションのような光景がしばらく続きました。

せっかくだから後ろも向きましょう、と全員で背中を見せるショットの際は、中原さんと山田先生が、制服を着せたトルソーを回転させ、背面を見せる大サービスで、MCが「そろそろ良いですか?」と止めるまで、客席からのシャッター音が止みませんでした。


こうして、1時間半にわたって繰り広げられた盛り沢山なトークは終わりを迎え、控え室に戻った登壇者たちは、山田先生にサインを入れていただいた本やパネルを手に、先生と記念撮影を行って、イベント行程、無事終了、となったのでした。
姫路文学館での「『十二国記』 山田章博原画展」は、12月14日まで。
11月2日からは文学館宛に山田先生が描き下ろされた楽俊イラスト(撮影可!)と、前日11月1日に「十二国記の世界へ」と題した朗読会で、声優/久川綾さんが使用されてた書き込み入りの朗読用台本が、そして、11月5日からはトークショーでお披露目されたヨウコ制服が、あらたに展示されています。
そして、世界初ミュージカル化「十二国記 -月の影 影の海-」は、12月9日より、日生劇場公演が始まります。東京は12月29日まで。そして年明け、1月6日〜11日は福岡/博多座、1月17日〜1月20日に大阪/梅田芸術劇場メインホール、1月28日〜2月1日は愛知/御園座での上演もあります。
みなさん、いずれもお見逃しなく!
- 文 村田晴子
- 写真提供 姫路文学館