REPORT

10月8日、都内ライブハウスにて、2020年版『RENT』の製作発表が開催された。90年代のNYで、貧困・HIV・ドラッグ・同性愛など、様々な社会的問題に直面しながらも懸命に生きる若者たちの姿を描き、世界で愛され続けているミュージカル『RENT』。現在の情勢に即し、記者席はソーシャルディスタンスが保たれ、取材陣も各社ごとの人数制限がある一方、会見全編をYouTubeで配信するなど“With コロナ”の時代らしい会見となったが、『RENT』の持つ愛に溢れるパワーは健在。キャスト20名が登壇し、生バンドに乗せ、この日だけのスペシャルパフォーマンスを披露するとともに、熱く意気込みを語った。

会見は歌唱披露からスタート。まず最初に歌われたのは、作品を代表するナンバー『Seasons of Love』。ダブルキャストも多い本作、20名での歌唱はこの製作発表でのみの特別バージョンだ。本番同様、横一列に並んだキャストがシンプルかつ美しいメロディを歌い上げる。その口元はマウスシールドで覆われているが、時に視線を交わしあうキャストたちの笑顔に、透明な壁など気にならなくなる。ライブハウスが一気に愛の色に染まった。

続けてロジャー役の堂珍嘉邦と甲斐翔真、ミミ役の遥海と八木アリサによる『Another Day』。ストレートにロジャーに思いをぶつけるミミ、心を動かされながらも「どこか別の場所で会えたら」と突き放すロジャー……という、物語序盤での関係性が描かれているナンバーだ。口火を切ったのは甲斐ロジャー。いらだちをうまく音に乗せる甲斐に、切なさを滲ませた八木の歌声が応じていく。続けてロジャー経験者の堂珍がさすがの安定感で思いをほとばしらせ、遥海がパワフルな歌声で聴かせる。二組のロジャー&ミミが思いをぶつけあい、最後は4人での絶唱と、ここでも本番では決して見られない贅沢なハーモニーを響かせた。

最後は花村想太 、平間壮一、堂珍、甲斐の4人での『What You Own』。仲間の死や別離を経たマークとロジャーが、世紀末のこのアメリカで自分たちはこの自分のままで生きていく、ひとりじゃない、と前を向く力強いロックナンバーだ。柔らかい声質の花村マークとロック歌唱の甲斐ロジャーが面白いハーモニーを作り、伸びやかな歌声の平間マークと硬軟自在な堂珍ロジャーは余裕すら感じるパフォーマンス。それぞれがそれぞれに個性的で、でもその個性がぶつかって美しいハーモニーになる。2020年カンパニーの誕生におおいに期待を抱かせられる3曲の劇中歌披露に、人数の絞られた報道席からも、温かい拍手が送られていた。

歌唱披露のあとは、フォトセッションを挟みキャスト挨拶、質疑応答と会見は続いた。以下、『RENT』愛が詰まったコメントをご紹介しよう。

キャスト挨拶

各役アルファベット
花村想太 (Da-iCE)マーク役
2017年に僕は初めてこの『RENT』という作品に触れました。この作品を観てミュージカルのステージに立ちたいという夢を持ち、その夢がいま叶おうとしていることが本当に幸せです。命がけでやっていきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。
平間壮一マーク役
マーク役をやらせていただきます平間壮一です。YouTubeをご覧の皆さん、みんな、ご飯を食べながら見たりしているんでしょうか。時間を割いていただいて本当にありがとうございます。短い時間ではありますが僕たちも楽しい話ができる……かな? 楽しんでもらえるよう頑張るので、よろしくお願いします。
堂珍嘉邦(CHEMISTRY)ロジャー役
この作品は自分にとってもターニングポイントになっている作品です。今回はきっちり最後まで走りぬくことを目標にやっていけたらと思っています。今日は楽しんでご覧ください。
甲斐翔真ロジャー役
世界中で愛されるこの作品に出演できることを、とても嬉しく思います。初めてミュージカルのオーディションを受けたのがこの『RENT』でした。このように製作発表を皆さんに発信できることが本当に幸せです。ぜひ今日は楽しんでください。よろしくお願いいたします。
遥海ミミ役
自分がミュージカルに出ると思っていなかったのが正直な気持ちなのですが、初めてのミュージカルが『RENT』で良かったです。まだわからないことが多いのですが、稽古が始まり、皆さんにたくさん支えていただいています。自分なりのミミを演じられるように精いっぱい頑張っていきたいと思います。
八木アリサミミ役
今日(バンドが入り)初めてカラオケじゃない状態で歌うことにすごく緊張しました。初舞台で初ミュージカルなのですが、この皆さんとご一緒出来てとても嬉しく、2020年に『RENT』をお届けできそうで、とてもワクワクしています。毎日みんなで、精いっぱい頑張っています。嬉しいです。よろしくお願いします。
加藤潤一コリンズ役
5年ぶりに『RENT』に戻ってこれました。新しい共演者のみんなと愛を紡いで、いい作品にして、この世の中、頑張っていきたいと思います。いまYouTubeをご覧になっている皆さんも、お時間がありましたら観にいらしてください。よろしくお願いします。
光永泰一朗コリンズ役
2017年に続いてコリンズ役を務めさせていただきます。僕はキャストとして選んでいただくずっと前からRENTヘッズのひとりで、ものすごく『RENT』が大好きで、今日の『Seasons of Love』でも泣きそうでした。時を超えて今に繋がるメッセージがこの作品には詰まっていると思うので、それを伝えられるように頑張っていきたいと思います。
RIOSKE (COLOR CREATION)エンジェル役
僕にとって初めてのミュージカル、初めての舞台です。ずっと大好きな作品でしたが、ハードルも高いし、プレッシャーも大きい。でも実際に稽古が始まって、RENTファミリーと毎日時間を共にし、幸せに稽古をしています。今のこの自分の幸せやたくさんの思いを早く皆さんにお届けできるのを楽しみに頑張っていきます。よろしくお願いいたします。
上口耕平エンジェル役
観に来てくださった皆様が2020年を振り返って――2020年を“数えた”ときに、色々なことがあったけれどあの時『RENT』を観てよかったなと思っていただけるような、そんな作品にできることを目標に挑みます。よろしくお願いいたします。
フランク莉奈モーリーン役
2011年にミュージカル界に飛び込んで、それからずっと『RENT』という作品に出ること、モーリーンという役を演じることが目標でした。『RENT』に出演できることをとても嬉しく思います。毎日この作品が持つ力に私自身が励まされながら、稽古をしています。素敵なキャスト・スタッフの皆さんと力をあわせて、この作品を届けたいと思います。
鈴木瑛美子モーリーン役
ステージに立てること、そして『RENT』の幕が開けられるということは奇跡に近いことだと思います。これまで様々な方々がモーリーンを演じてきて、自分はどんなモーリーンになったらいいのかという不安があるのですが、優しい共演者の皆さんが受け止めてくれる安心感あります。この気持ち忘れずにモーリーンを作り上げていきたいと思います。
宮本美季ジョアンヌ役
ありがたいことに今回で3度目の出演です。毎回本当に違う『RENT』の世界を、新しいキャストと作っていくのですが、2020年という年に、人間にはこんなにも激しい感情がいくつもあって、“繋がる”ということがこんなにも素敵なことなんだということを、お稽古を通して日々感じています。今年ならではの『RENT』をお届けできるように頑張ります。
吉田広大ベニー役
今回初めて『RENT』に出演させていただくのですが、ベニーの持つ、目標に向かう強さや憎たらしさ、その中でも垣間見える仲間に対する優しさなどを自分なりに表現できたらと思っています。『RENT』を通して、僕ももっと愛を知っていくだろうし、その愛を皆様にお届けできるのを楽しみにしています。一生懸命頑張っていきたいと思います。
ICHI
大好きな作品に出演できて本当に幸せですし、同じ方向に向かって歩いている仲間、家族がいることが幸せです。もう稽古が始まっています。壁にぶつかったりすることもあるのですが、全身全霊で殻をやぶって頑張っていきたいたいと思います。よろしくお願いいたします。
コリ伽路
アレクシー・ダーリンほかを演じます。まさか自分がこの作品に出られると思っていなかったのですが、皆さんと一緒に『RENT』のメンバーになれて幸せで仕方ないです。日々稽古の中で皆さんの愛を感じますし、最後までこの仲間と乗り切れたらいいなと心から思っています。頑張ります!
奈良木浚赫
ミスター・ジェファーソン含め諸々やらせていただきます。僕も3回目の出演です。Seasons of Love、今年を何で数えますか。コロナですか。愛で数えましょう! ……これ、ちょっとさっきからずっと考えていました……(笑)。今年しかできない特別な『RENT』ができるはずなので、それをお届けできるように頑張りたいと思います。
小熊 綸
ミセス・コーエン役とその他諸々をやります。たくさんの愛を精いっぱい皆さんに届けて、カンパニーを支えていきたいと思います。よろしくお願いします!
吉田華奈
ミセス・ジェファーソン役とその他諸々を務めさせていただきます。今年は多くの作品が上演できない状況が続く中、こうして『RENT』を皆さんに届けられるということが本当に嬉しく、すごく幸せです。日々、葛藤しながらお稽古に励んでいます。ご来場いただく皆様には、満足していただけると思いますので、ご来場お待ちしています。
吉原シュート
スティーブ役ほか、色々やらせていただきます。皆さんどんな人だろうかとドキドキしながら稽古を迎えたのですが、本当に素敵な皆さんでした。僕自身はトランスジェンダーで、そのことを稽古で改めてカミングアウトをしたのですが、そのときの皆さんの反応がとても温かくて。今すごく居心地がいいんです。本当にこのメンバーでよかったなと思っています。

質疑応答

――マーク、ロジャー、ミミ、コリンズ、エンジェル、モーリーン、ベニーを演じる新キャストの方へ。稽古が始まって『RENT』という作品に挑んでいる今の心境、改めて感じる『RENT』への思いをお聞かせください。

花村

「僕は他のお仕事もあって皆さんほどお稽古に入れていないのですが、稽古場にいくとすぐにその世界に引き込まれます。稽古場に一歩足を踏み入れた瞬間に覇気みたいなものを感じる。すごく『RENT』の力強さを感じます。こちらも気を引き締めないといけないなと思う、これが『RENT』の力なのかなと日々実感しています」

甲斐

「僕はまだミュージカル出演は2本目ですし、映像のお仕事でも本当はきっとそうあるべきなのでしょうが、『RENT』は嘘が通用しない。本当に本物になります。本物にならないといけないという稽古をしていて、それはとても怖かったりつらかったりキツかったりもするのですが、きっと『RENT』ってそういう苦しい思いをしたからこそ出来上がるものなんじゃないかなと感じながら、日々稽古をしています。この2020年、この時代にやる意味があると信じて、僕らは走り続けたいと思います」

遥海

「ミミ役をオーディションで受けて、無事合格できて、本当に大好きな作品だったし、関われることがすごく嬉しい。……なのですが、自分の中のミミの印象は、ストリッパーだったり麻薬依存だったりHIVに感染していたり、どれも自分から遠く、不安は正直なところありました。でも稽古が始まって、アンディ(アンディ・セニョールJr./日本版リステージ)とたくさんお話する中で、ミミのそういう表面に出ていることではなく、例えば「NO DAY BUT TODAY」という精神、過去もあるし未来も考えなきゃいけない、でも今生きることの大切さがまずある、というようなことに自分は共感できて、そこからミミにコネクトできて見え方が全く変わりました。ミミを“頑張って演じよう”ではなく、“自分の中のミミって何なんだろう”と、日々、稽古場や帰り道、夜中に考えています。自分にしかできないミミを本番までにみつけて、素敵なミミになれるように頑張っていきたいです」

八木

「毎日稽古で、すごく体力を使うんです。1日1曲しかやらない日もあれば、2曲3曲やる日もあるのですが、明るい曲の時は“ファミリー!”という感じでみんなでワイワイ楽しくやれるのですが、ズシンとくる曲の時はもう抉り取られてしまって、泥まみれ汗まみれ……という感じ(笑)。でも遥海ちゃんが優しいんです。遥海ちゃんと私はふたりとも今回ミュージカルが初めてで、私は歌も初めて、遥海ちゃんはお芝居が初めてと似た境遇なのですが、みんなが沈んでいるときに遥海ちゃんが後ろからハグしてきてくれたり。そういう温かさがあって、ほかのみんなもですが、さらけ出しあって、受け止めあって、すごく充実した日々を過ごしています。さらけ出したものを作品としてお届けすることはちょっと怖いところもありますが、素敵なものをお届けしますので、ぜひ観にきてほしいです」

RIOSKE

「僕も初めての舞台、初めての演技です。初めてなのですが、スタッフやアンディ、マーカス(マーカス・ポール・ジェームズ/振付補)と話している中で、演技と思わず自分の気持ちでアクトするということを教わりました。もちろんエンジェルをやるのですが、RIOSKEとして何かを歌ったり喋ったりすることが大事なんだと。エンジェルは明るいところやハッピーなところが自分に似ていて、そこに関しては大変だなとは思わないのですが、まだまだ自分らしいエンジェルというものを出していけるように、もっともっと頑張っていきたいですし、自分にしかできないエンジェルを目指してこれからも頑張っていきたいと思います」

上口

「僕も今回の稽古場を、すごく愛に溢れた稽古場だなと感じています。稽古序盤でけっこうお互い、色々な話をしていて。ここまでひとりひとりのことを詳しく知っている現場って珍しいんじゃないかなと感じています。家族みたいな感覚です。でもみんなそれぞれが自分のパフォーマンスに責任を持っているので、稽古場で緊張したりもしますし、それを温かく見守ったりもしています。刺激的で、愛があって、とてもいい稽古場です。エンジェルが歌う『Today 4 U』というナンバーがありますが、僕はこれを、今日はあなたのために生きることで、明日、自分に愛が返ってくる、と理解しています。そうしたらその愛のパワーはまた、あなたに与えられる。ずっと続く愛の連鎖、僕は『RENT』にそういうイメージがあるので、観に来てくださった皆さまにもそういう愛の連鎖がずっと届いていくといいなと思います」

フランク

「何年も前から『RENT』に出たいという強い思いを持っていたのですが、それは、『RENT』の登場人物や作品に共感できると思って、出たいと思っていたんです。出演が決まったときは嬉しい反面プレッシャーが大きくて、情報解禁の日に具合が悪くなってしまったのですが(笑)。でも自分が思っていた共感以上に、2020年に入って世の中がこんな風に変わっていって、まったく違う角度から作品に対する共感が生まれました。今年になってからたくさん2020年と作品がリンクしてきて、(作者の)ジョナサン・ラーソンは予言者だったのかな!? と思うくらいです。たとえば「取り上げられたの、パフォーマンススペース。そしてその代わりは、嘘とルールとバーチャルライフ」という言葉があるのですが、これってまさに今だなって思います。愛を伝えていくために嘘とか世の中の不公平とか理不尽にいい意味で中指立てて、“くそくらえ精神”でモーリーンを作っていきたいと思っています。言葉が汚くなってすみません」

鈴木

「私はもともと性格がはっちゃけているというか、明るいところがあって、映画や舞台を見て「あ、私モーリーンっぽい!」って思うことがずっとありました。実際稽古に入ってみて、「やっぱり私、モーリーンじゃん」と思うところもありますが、実際に『Over The Moon』のお稽古に入ったときに、確かに性格や空気感はモーリーンかもしれませんが、彼女の信念の強さや訴えたい心、子どもっぽいところ、ぶつけていく強さ、さらけ出し方が私にはまだまだ全然足りていなかったと気づきました。本当は私も持っていて、でもこの時代の中で隠さなきゃいけなかったり、変わらざるを得なかった“子ども心”を稽古でこじ開けられ、もともとの自分に戻してくれて、やっといまモーリーンという女性と繋がれた感じがしています。皆さんも言うとおり、その役を演じるというより、自分がモーリーンだ、といものをどんどん出していかないといけないので、すごく難しい。掴んだものをどんどん広げていきたいなと思っています」

吉田

「映画やDVDを見て、なんとなく世界観をイメージして、稽古場に入りました。稽古を重ねるにつれ、『RENT』の世界が自分のリアルになっていきます。今コロナウイルスで遠い国の人がたくさん亡くなっているというニュースを見ても、リアルにそれを感じることができているなと最近感じました。そう感じた時に、90年代のNYでこういうことがいろいろあったんだ、という情報をもっと知りたくなったし、その上で自分が演じるベニーはどう生きて、この言葉を言ったのだろうと考えます。基本的にベニーは嫌われ者で、1対19みたいになることもあって(笑)、そんな時はちょっと泣きそうになりますが、でもそのあとにみんながフランクに話しかけてくれたりすると「あ、嫌われていなかった」とちょっとほっとします。そうやって日々皆さんの愛を感じたり、稽古に対する熱意を感じたりして、自分も引き上げていっていただいているなと感じています。頑張ります」

――前回も出演した方を代表して平間さんと堂珍さん。今年は演出補のアンディさんが来日できずリモートでお稽古が進んでいると聞いていますが、これまでのお稽古と違うところや大変なこと、新鮮なことを教えてください。

平間

「全部新鮮ですよね。マスクしながら稽古するのもそうですし。本当は一番心を開いて距離を縮めながら稽古をしたいところを、ひとつ(マスクの)壁があることで、歯がゆく思うところがあったりもしますが、みんながそれを耐えて稽古をしています。またその思いがみんなをひとつにしているのかなと思ったりもします。逆に言えば今だからこういう稽古ができるし、今しかできない稽古だと思うと、特別な『RENT』になるのかな、なんて思います」

堂珍

「そうだね。直接演出家のふたりと会ってお稽古できない分、経験しているキャストたちが補えるものがあればいいなと思って毎日話したりもしています。基本的にはやることは一緒ですので。そんな壁も乗り越えながら本番幕を開けられるところまで、みんなでいけたらいいなと思います」

平間

「やっぱりリモート稽古なので、僕たちのパワーが画面越しにどこまでアンディに届いているのかな、とか、みんなで調整しながらやっています。いつもの稽古よりも、スタッフさん含め、ひとつになって稽古をしているなって感じます」

――(公式ツイッターに寄せられたお客さまからの質問)『RENT』初観劇という方からです。初めてミュージカルを見るのですが、ここが見どころというシーンやおススメのシーン、一押しの曲があれば教えてください。

花村

「そうですね、全部……ですね」

平間

「間違いない! 間違いないです!!」

花村

「本当に色々な感動の積み重ねがあるので。どこをかいつまんで……ではなく、頭から最後までいくと、『RENT』です!」

平間

「全部です! ただ、僕がミュージカルを初めて観た時は、台詞を聞いておけばいいんだろうなと思って観ていたんです。歌が台詞だということをその時に知った。だから歌を、音楽だと思わずに「何をしゃべっているんだろう」と見ていただけると、最後まで置いていかれずに楽しめると思います」

――最後に締めの言葉を花村さんと平間さんからお願いします。

花村

「『Seasons of Love』でも歌っているように、人生は1分の積み重ねです。もっと言えば1秒、一瞬の積み重ね。そこに感動というスパイスが加わると、一生心に残るもの、永遠という存在になると思います。その永遠になる瞬間がこの『RENT』にはたくさん詰まっています。このご時世ですので無理にとは言いませんが、劇場に足を運んでいただけますと嬉しいです。僕たちがどんなに死ぬ気で、どんなに最高のものを作りあげても、観てくださる方がいなければ、それは素晴らしいものにはならないと思うので。この『RENT』という世界を素晴らしい存在にするためにぜひ力をお貸しください。よろしくお願いします」

平間

「愛という言葉……みんな「愛を伝えたくて」と言っていますが、愛とは人によって色々な形があります。色も匂いも違うかもしれないし、人の死が実は愛で、自分にとって何かを教えてくれることだったりもします。何か整理がつかないことがあったときに、この『RENT』という場所が、皆さんの気持ちを受け取れる場所でありたいなと自分は思っています。今の段階では自分たちが楽しくて、自分たちが苦しくて、稽古で頑張った姿を皆さんに見せますという状態ですが、ひとりひとり稽古場で泣いたり、苦しい思いをして、皆さんの前に立つ時には、それぞれが皆さんの愛を受け取れる場所になれるように頑張っていきます。こんな世の中ですが、無理だけはしないようにして、劇場に足を運んでください。よろしくお願いします」

(取材・文:平野祥恵)