COLLABORATION

ル・ムーリス
- 時代を超えて、世界の王侯貴族と芸術家に愛されるホテル -

劇中に名前が登場するホテル ル・ムーリスは、パリ中心部、チュイルリー公園前に位置する、1835年創業の老舗ホテルです。パリの五つ星以上のホテルに与えられる「パラスホテル」という称号を保持する、まるで現代の宮殿のような風格です。劇作家の藤沢文翁が「女王がいた客室」の着想を得て執筆したのも、このホテルの一室です。舞台設定は20世紀初頭のパリ、架空のホテル・バッサーノですが、パリの歴史と共に歩んできたル・ムーリスは、劇中の女王を迎えるのに相応しい壮麗さと気品を感じさせます。
始まりは、ノルマンディーの港町カレー。ここで旅宿を営んでいたシャルル=オーギュスタン・ムーリスは、ドーバー海峡を渡り、立ち寄る英国の紳士淑女達が「どんな要望にも応えてくれる最高級ホテルがパリに無い」と嘆く声を耳にします。それならば、ロンドン以上に洗練されたホテルを!という想いを抱き、パリにホテルを開業します。英語が流暢なバトラーに、両替のシステム、全室にバスタブを完備、コンシエルジュやルームサービスを開始し、伝統美を誇る内装に値する上質なサービスを提供し始めます。2世紀に渡り、ヴィクトリア女王からナポレオン3世、モンテネグロの国王、プリンス・オブ・ウェールズ、イギリス国王ジョージ6世、ザンジバールのスルタン、ジャイプールのマハラジャ、ロシアの大公妃が常連となります。20世紀には、まるでパリの小さなヴェルサイユ宮殿、ホテル・デ・ロワ(Hotel des Rois)=「王侯貴族のホテル」」と讚えられます。今でもホテルの紋章には王冠が誇らし気に輝いています。豪華さの中の快適さ、そして真摯なサービス。あらゆるものを誠実に追いかけているからこそ、ル・ムーリスは時代を超えて愛される一流のホテルで在り続けられるのです。

ロシア革命でロマノフ王朝が滅亡した1917年後、ロシアから多くの亡命者を受け入れたパリは、「狂騒の20年時代」に突入します。第一次世界大戦の痛みを忘れ、平和を謳歌しようと、パリ文化は華やぎます。新聞広告には、上流階級の顧客達がパリの魅惑的な夜景を臨むル・ムーリスの屋上テラスで、ディナーやダンスを楽しんでいる様子が描かれています。ソーシャライツや芸術家、実業家や詩人が集う社交場としてカフェ・ソサエティが流行り、亡命ロシア貴族によるファッションブランドも設立されます。ディアギレフ率いるバレエ・リュスと呼ばれるロシアバレエ団は、エキゾチックな衣装と高い芸術性でパリジャンを魅了し、ピカソやサティ、コクトーと交流します。ロシア人は、それまでのパリには存在しなかった感性で、才能を開花させ、狂騒の時代を彩ります。ル・ムーリスもまた、晩餐会や舞踏会を開催し、演奏会や読書サロンなど芸術交流の場として、パトロンとアーティストを繋ぐ文化的な役割を担います。

ル・ムーリスにはロシア人ゲストの様々なエピソードが残されています。19世紀末、リサイタルのためにパリを訪れたチャイコフスキーはピアノソナタ二番とジャンヌ・ダルクを描いたオペラ「オルレアンの少女」をホテルの一室で書き上げます。また、トルストイが滞在し、ピカソが妻オルガと結婚披露宴を開催したのも、このホテルです。ロマノフ王朝時代の芸術家が残した余韻や息づきを感じられるこの空間こそが、「女王がいた客室」のインスピレーションの元となったと言っても過言ではありません。そもそもホテルとは、世界中の人が交錯する劇場的空間。様々な想いを抱えて訪れる顧客達と、彼らの心の糸を手繰り寄せようとするホテルマンたちの非日常な日常を、藤沢文翁は想像をめぐらせ、考察したのです。

豪華絢爛な内装や、チュイルリー公園の回転木馬、黄金の宝石箱のような夜景、、、「女王がいた客室」には、愛され続けているパリの景色と空気が詰まっています。時代の変化に動じることなく、パリ文化を今も体現し続けている「世界の王侯貴族と芸術家に愛されるホテル」に、いつか宿泊してみてください。狂騒の時代の香りとロマノフ貴族の高貴さと憂い、パリ独特のノスタルジーに、記憶の欠片を優しく包む人の暖かさに触れることができるでしょう。時代を超えて滞在した多くの顧客達のように、ここは、必ずもう一度訪れたくなる「願いが叶うホテル」なのです。

ル・ムーリス
コミュニケーションマネージャー
大岡陽子

コラボレーション企画実施予定!どうぞお楽しみに!