ミュージカル『ビューティフル』に
お寄せいただいた、
著名人の皆様のコメントを
ご紹介いたします!

(敬称略)

コロナの日々の中で~
『Beautiful: The Carole King Musical』に寄せて

去る7月20日の午前3時から、キャロル・キングが4年前の7月に、英国ロンドンのハイド・パークで、6万5000人の聴衆を集めて行われた「Tapestry/つづれおり」45周年記念の全曲再現ライヴ・コンサートという超人気映像が、日本で一週間限定で無料公開されて、とても大きな話題を集めました。

これを見た人達からは、「コロナ憂で沈み込んでいたけれど、『You've Got a Friend』が歌われた時は感動でボロ泣きしをしました」「キャロルから元気を貰いました!!」と言った言葉がSNSに多数寄せられて、改めてキャロルの素晴らしさを再認識したものです。

その歴史に残る大ヒット・アルバム「Tapestry/つづれおり」で、キャロルが「You've Got a Friend」を含むグラミー賞4部門を手にした日から、今はもう49年。でもキャロルには更に、「Oh Carol」「Will You Love Me Tomorrow」「The Loco-Motion」など、1960年代の初頭から愛されたヒット曲の作者としての顔と実績があるのだから、本当にびっくりです。現在78歳のキャロル・キングのキャリアは、実に60年!!そう、キャロルはなんと!18歳頃から活躍していたのですね。

だから2013年にアメリカで幕を開けたキャロルの半生を描いたミュージカル『Beautiful: The Carole King Musical』は、そんな60年代を彩った黒人や白人グループによるヒット曲も数多く登場するので、実に華やかな楽しい舞台ですが、日本でもこのミュージカルが、水樹奈々&平原綾香のダブル・キャストで幕を開けたのは、2017年7月26日の帝国劇場でした。

もちろん初日の水樹奈々さんを飛んで観に行って、次の日は平原綾香さんだったのですが、ステージではまだ16歳という若さで、飛び級してカレッジに通っていたキャロルが登場。ハンサムなジェリー・ゴフィンと出会って結婚。ジェリーの詞にキャロルがメロディを付けて、ソングライターとして華々しく活躍しながらも、子育てと夫ジェリーの浮気に悩み苦しむキャロルを演じ、最後は夫ジェリーと別れて、アメリカ西海岸に移住。陽光まばゆいカリフォルニアから、世界に先がけて女性シンガー・ソングライターとなり、アルバム「Tapestry/つづれおり」と、そこに収められた「It’s Too Late」や「You've Got a Friend」などの大ヒット曲を次々と産み出してゆく姿を、ピアノの弾き語りで聞かせ、演じる水樹さんと平原さんの姿には心底から感動。初日から千穐楽まで、観るたびに涙、涙でした。

平原さんはデビュー当時から聴く機会も多く、2014年に彼女が初めて主演した『ラブ・ネバー・ダイ』で、『オペラ座の怪人』の名曲の数々で世界に知られたアンドリュー・ロイド=ウェバー作曲の「Love Never Dies」というスケールの大きな歌を、見事なオペラ調の発声で歌い切って感心したものでしたが、軽いアメリカン・ポップスから黒人アーティストによるR&B、そしてキャロル・キングのロック・テイストが強い「Tapestry/つづれおり」以降の歌となったら果たしてどうなるのか。

まして水樹奈々さんは、私にとっては未知数というか、声優・歌手としてはドームやアリーナを超満員にする人気者だと言うことは知っていましたし、2009年からは毎年続けて年末の「紅白歌合戦」に出演していたのは知っていたけれど、イメージとしてはどうしても「洋楽」や「シンガー・ソングライター」とは結びつかなくて不安だったのです。

でも調べてみてびっくり!1997年から丁度声優デビュー20周年での『Beautiful: The Carole King Musical』へのミュージカル初参加で、幼少の頃から歌はもちろん、ピアノやエレクトーンにも親しみ、イギリスのオアシスなどにも大きな影響を受けていて、何より驚いたのは、約300曲あるオリジナル曲のうち、すでに当時70曲を超える作品を、自ら作詞・ときには作曲もしていると言うことでした。

もちろん水樹さんと平原さんとでは、キャラクターも微妙に違いますけれど、軽妙な60年代のポップスはもちろんのこと、「Tapestry/つづれおり」以降のしっとりとした歌にも、それとなくにじみ出るキャリアと年輪があって、中でもそのパワフルな声でアメリカを代表するディーバとなった黒人のアレサ・フランクリンの名唱で大ヒットしたキャロルの「A Natural Woman」を聞かせる場面。

ソウルフルな小節を効かせ、劇場全体がビリビリと振動するほどの声量で、それこそ今は亡きアレサにも聞いて貰いたかったほどの名唱を、水樹さんも平原さんも聞かせてくれて、これには私も本当に驚いてしまいました。

そんな二人がキャロル・キングを演じる『Beautiful: The Carole King Musical』は、今年11月に帝国劇場での再演が決まっています。何とか無事にコロナが収束して、再びあの夢のステージが観れることを心から願っていますけれど、出来ることなら初めて観に行くという人も、また今度が二度目、三度目という人も、せっかくのダブル・キャストなのですから、ぜひご自分がファンと言うだけではない、水樹さん、平原さん、両方のキャロルを楽しんで頂けたらと願っています。

どちらも本当に素晴らしいけれど、それぞれの熱演ぶりから元気を貰えると言うだけではなく、それぞれが微妙に違うたたずまいのいじらしさ、とか、個性の違いが魅力なんですよね。その日、違うキャストで幕が開く…というだけで、きっとドキドキすると思いますよ!!

湯川れい子(音楽評論・作詞)

(五十音順・敬称略)

ミュージカル「ビューティフル」は私達の世代にとっては、本当に懐かしい楽曲ばかりで、観ている間中、タイムスリップして、それらを聴いていた時代に戻れました。名曲揃いな上、キャロル・キングの人生が重なっているので、そのストーリーにも魅せられ、グイ グイ心が引っ張られました。キャロル・キングとパートナーのジェリーの出会いから別れまでを描くと同時に、友情がもうひとつのテーマになっていたので「You've Got a Friend」を歌うシーンでは胸が熱くなりました。特筆すべきは平原綾香さんのキャロル役で、歌の神様に愛された人を、同じく歌を歌うべく運命づけられた人が演じるという妙味。本当に素晴しいキャスティングだと思いました。また他のキャストも実力者揃いで、最後まで心を釘付けにされた感じです。音楽の力って凄いなと、改めて思わされたひとときでした。

阿木燿子(作詞家・プロデューサー)

この「ビューティフル」から新たなミュージカルスター平原綾香が生まれたんだ。綾香ちゃんがキャロル・キング役を演じる事への大いなる期待を抱いて客席に着いたが、想像を遥かに超え、役と一体化した”キャロル平原”をステージ上に目撃して感動してしまった。
役者・平原綾香が其処にいたんだ。
後半で歌われる「ナチュラル・ウーマン」でのホイッスル・ファルセットにも感動した。
平原綾香の魂が受け止めた名曲達は平原綾香の歌声を通して”懐かしくも新鮮な作品”に生まれ変わっていた。
ミュージカル「ビューティフル」は出演者全員の”歌”への愛情が滲み出ていて心が暖かくなる。

宇崎竜童(音楽家)

ピアノ一本で、自作のうたを人に伝えられるということ・・・
エバーグリーンな楽曲は、やさしくシンプルに聞こえつつも、
実はその奥にきらめくアイディアが秘められているということ・・・
そして、それらはいつ聞いても、生まれたてのようにあたたかいという事を、
キャロル・キングが教えてくれた。
キャロル・キングがいなかったら、私はシンガーソングライターになっていなかった。

松任谷由実(シンガーソングライター)

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