第三十八回菊田一夫演劇賞発表

2013年5月23日
一般社団法人映画演劇文化協会

「第38回菊田一夫演劇賞」の授賞式が5月22日に行われ、受賞者には賞状と、正賞の記念楯と副賞が贈られました。


一、菊田一夫演劇大賞

藤山 直美・高畑 淳子
(『ええから加減』における海野濱子・海野宇多恵の見事なコンビに対して)


藤山直美
「本日は誠にありがとうございました。去年東宝様よりご縁を頂きまして、高畑淳子さんとみなさん一緒に舞台に立たせて頂きました。良いご縁を頂きまして、良い舞台に立たせて頂きまして、良い共演者の皆様、スタッフの皆様、関係者の皆様に巡り合えたことを、心より感謝いたしております。なかなか私は東宝の舞台に立たせて頂くというご縁はなかったんですけれども、去年の『ええから加減』を機に、本当にいい作品に巡り会えたことを、心より感謝いたしております。役者1人では何もできません。共演者の皆様、関係者の皆様、そしてスタッフの皆様の力を頂きまして1つの舞台が出来上がり、お客様に来て頂くことができて、1つの公演が成り立つわけでございます。ご縁を頂きました皆様方に心より感謝いたしまして、秋からまたこの公演の巡業に行かせて頂きますので、心を引き締めてお客様に喜んで頂けますことだけを目の前に置きまして、一生懸命高畑さん・みなさんとお芝居に精進させていただきます。もう一度また引き締めて、頑張らせていただきます。ありがとうございます。身に余る光栄でございます。感謝いたします。本当にありがとうございました。」


高畑淳子
「今日こそは落ち着かなければ、と思っています。まずはこの作品を企画くださいました皆様方に、高いところからではございますが御礼を申し上げたいと思います。そして、藤山直美さんと誰を漫才コンビとして組ませるかという時に、よくぞよくぞ私のことを思い出して頂けたなと、深く深く感謝する次第でございます。私は藤山さんの軽い"追っかけ"でして、友達が出ていると楽屋で遭遇しないかなと、楽屋をウロウロしておりまして、初めて生の藤山さんに会ったのはお手洗いでした(笑)。ピンクのガウンを着ている藤山さんと、まさかお手洗いで会うとは・・・これは良かったな、なんて思っているそんなミーハーな人間が、『ええから加減』という舞台に立たせていただいて、ほとんど記憶がありません。中国の卓球選手のような藤山さんが現れて、打たれる球をただただ無心で拾っているうちに声が枯れてしまって、たぶんこの賞を審査した方は声が枯れていない時の私を見ていただいたのではないかと、思ったりもしております。今年はもう少し落ち着いて・・・あ、でも落ち着いても良いことがないので、やっぱり無心に球を拾って、動物のような藤山さんに付いて(笑)、あるがままにお客様とライブを楽しんで、そして舞台の最初と最後が漫才であるというこの過酷な舞台はプロデューサーに言わせると「これはスピルバーグだ」ということなんですが、挑戦したいと思います。
そしてもう1点だけ。この漫才をやらなければいけないという、2週間ほど前ですか。深夜のあるパーティーで、お酒を一滴も飲めない「ますだおかだ」の増田英彦さんがなぜかいらして、どうしてあの時あの方はいたんでしょうか、家庭の不和でもあったのでしょうか(笑)。その方がですね、漫才をご指導してくださいました。本当にありがたいことだったと思います。ぜひともまたご指導いただいて、秋からの巡業、生きて帰りたいと思います。どうもありがとうございました!」


一、菊田一夫演劇賞

安蘭 けい
(『サンセット大通り』のノーマ・デズモンド、
『アリス・イン・ワンダーランド』のアリス・コーンウィンクルの役の演技に対して)


安蘭 けい
「この度は本当に素晴らしい賞を頂いてありがとうございました。こんな賞を頂けるとは思っていなかったので、今は本当にびっくりしています。この賞を頂くきっかけになった『サンセット大通り』そして『アリス・イン・ワンダーランド』は私にとってとても勉強になった作品でもありますが、稽古はかなり過酷でして、それをいつも支えてくださったスタッフの皆様、そして素晴らしい共演者のおかげで今ここに立っているのだと、今とても感謝しております。特に、この2つの作品の演出をされた鈴木裕美さんの、作品に対する強い熱意、信念、それはまるで執念にも見えるような力強い稽古場の居方を見て心から感銘して、刺激を受けました。本当にありがとうございました。この賞を頂いたことを糧に、これからも舞台人として、そして女優としてますます精進したいのと、1人でも多くの方に劇場に来て頂ける素晴らしい舞台づくりをしていきたいと思いますので、これからもどうぞよろしくお願い致します。本日はありがとうございました。」


加藤 健一
(『バカのカベ~フランス風~』のフランソワ、
『八月のラブソング』のロディオン・ニコラエヴィッチの役の演技に対して)

代理:石井美保子(青年座映画放送(株)代表)

映像メッセージ
「この度は大変歴史ある賞を頂戴いたしまして、ありがとうございました。ちょうど私、菊田一夫先生の『花咲く港』という戯曲を読んだばかりで、次の日に受賞のお知らせを頂きました。嬉しいというよりもドキっといたしまして、鳥肌が立つ思いでございました。今日は残念ながら名古屋でお芝居の本番がありますためにそちらの会場に伺えなくて本当に残念です。私はもう30数年、小劇場でずっと活躍してまいりました。審査員の先生方には、こんな小さな活動にも気を配っていただいて、本当にありがとうございます。大変なお仕事だと思います、ご苦労様です。今回の受賞者は豪華なメンバーで、会場はさぞ華やかなことだろうと思います。そこに行きたかったんですけどね、残念です。特に、私の敬愛する藤山直美さん、高畑淳子さんと同時期の受賞ということで、いつまでも思い出に残る賞になりました。『ええから加減』を劇場で拝見しましたけど、本当に大笑いさせて頂いて、大きな感動を頂きました。お2人の大賞受賞を我がことのように嬉しく思っております。そして最後になりましたが、審査員の先生方、そして関係者の皆さん、そして菊田一夫先生、本当にありがとうございました。」


坂本 真綾
(『ダディ・ロング・レッグズ~足ながおじさんより~』のジルーシャ・アボットの役の演技に対して)



坂本 真綾
「この度は本当に思いがけずこのような素晴らしい賞を頂きまして、身に余る光栄と思っております。私が昨年出演した舞台は『ダディ・ロング・レッグズ~足ながおじさんより~』というこの1作品のみだったのですが、私にとっては3年ぶりのミュージカルへの挑戦でもありましたし、始まる前はかなりプレッシャーを感じていました。でも稽古が始まって進むにつれて、もしかしたらものすごく運命的な出会いを今果たしたのかもしれないというような、すごく素敵な作品に巡り合えたという喜びを噛みしめる日々に変わっていきました。演出のジョン・ケアードさん、そして2人芝居でたった1人の共演者であった井上芳雄さんをはじめ、この作品に携わった本当に全ての方が素晴らしいお人柄と、そして才能をお持ちで、そんな皆さんに囲まれた日々というのは本当に学ぶことの多い数週間でした。今回、このような賞を頂いたという第一報を耳にしました時にも、真っ先にそんな仲間たちの顔が浮かんできまして、本当にみなさんの支えと導きがあったからだなと、感謝の気持ちでいっぱいです。私にとっても、持てる愛情のすべてをかけて誠心誠意務めさせて頂いたつもりの役柄でしたので、それをこのように観ていてくださった方が印象に残ったと思っていただけたのなら本当に嬉しく、また励みに思いますし、この賞に見合うような女性にならなくてはと、身の引き締まる思いでいます。どうもありがとうございました。」


松井 るみ
(『英国王のスピーチ』『ロックオペラ モーツァルト』をはじめとする創意あふれる舞台美術の成果に対して)


松井 るみ
「この度は本当に素晴らしい賞を頂き、ありがとうございます。菊田一夫演劇賞を過去の受賞者を調べたところ、私のようなスタッフで受賞された方は実はそんなに多くなく、第1回の特別賞で真木小太郎先生が受賞されたのをはじめ、なかなか珍しいことでございました。その中で、私のようなスタッフがこんな素晴らしい賞をいただけて本当にありがたく思っています。そして、私は幸いなことに東宝さんからたくさんの仕事をさせていただいておりますし、大賞を受賞された『ええから加減』にも参加しております。にも関わらず、今回の授賞の理由となります作品が、クオラスさん製作『英国王のスピーチ』、先ほど安蘭さんの話にもありました鈴木裕美さんのパワフルな演出で行われた作品です。そして、ネルケプランニングさん製作、フィリップ・マッキンリー演出、この方は今ブロードウェイでやっております『スパイダーマン』の演出家なんですけれども、その『ロックオペラ モーツァルト』が理由となっておりまして、私自身も大変驚いておりますし、たぶんこの作品に参加したスタッフ全員が喜んでくれていると思っております。私たちのようなスタッフはなかなか照明の当たるところで仕事をすることは少なく、今日のように非常にまぶしくお客様の前でしゃべることというのはなかなか無いんですけど、こういう機会を頂くと非常に励みにもなりますし、スタッフみんなも刺激になると思いますので、このことを胸に頑張っていきたいと思います。シアタークリエの1階に菊田一夫先生の銅像があるのをみなさんご存知でしょうか。私はクリエの仕込みにいくたびに、菊田先生の前で弁当を食べてます(笑)。今まで食べててすみません。なので、これからはクリエに行った時、菊田先生の前を通った時に今の気持ちを忘れないようにしたいと思います。本日は本当にありがとうございました。」


一、菊田一夫演劇賞特別賞

浜 木綿子
(芸能生活60周年を数える、永年の舞台の功績に対して)

代理:酒井喜一郎(東宝演劇部 プロデューサー)

メッセージ代読
「この度は、菊田一夫演劇大賞特別賞を頂戴しまして、誠に有難う存じました。選考委員長の東宝松岡名誉会長様をはじめ、選考委員の皆様方に御礼申し上げます。先週の日曜日まで、舞台『人生は、ガタゴト列車に乗って・・・・・』に出演しておりましたが、東京を皮切りに2カ月間の全国公演をやり終えた安堵からでしょうか。風邪をひき、高熱を出してしまいました。本日は、授賞式にお伺いし、恩師であります菊田一夫先生へ、感謝の気持ちをお伝えしようと思っておりましたが・・・残念でなりません。宝塚歌劇団入団以来、今年で芸能生活60周年を迎えることができました。これは皆様方の支えがあったからでございます。多くの方々に感謝をし、御礼申し上げます。この賞を励みに、あと少し、この道を歩ませて頂きたく存じます。菊田先生の教えを、しっかり心にとどめながら・・・・・・。本日は、誠に有難う存じました。」


黒柳 徹子
(永年の翻訳劇に対する情熱と功績に対して)


黒柳 徹子
「私はいつもテレビに出ておりますので、舞台女優だということをご存じない方も大勢いらっしゃると思うんですけど、その私に大変素晴らしい賞を頂きまして、審査員の皆様方へ御礼を申し上げます。本当にありがとうございました。しかも、内容が翻訳劇をずっとやり続けてきたということと、それに対する情熱ということで確かに情熱を持ち続けておりまして、翻訳劇も50年ぐらい前からやっております。近いところでは、ル・テアトル銀座という劇場がちょうど翻訳劇に良い大きさなので、高橋昌也さんが芸術監督の時から約25年、出させて頂いています。いつも上等な外国の芝居を、しかも喜劇に限ってやらせて頂いてまいりました。そのような活動に賞を頂けたのでものすごくうれしく思っております。ただ、残念なことにル・テアトル銀座が5月31日で閉館になってしまって、あそこの建物全部をどなたかがお買いになったようなんですが(笑)。本当に残念で、この5月29日~31日の3日間で、ル・テトル銀座のお別れ公演をできることとなりました。
菊田先生には、『縮図』と『台所太平記』という2本の芝居を演出して頂きました。大きな思い出は、菊田先生が噂によると舞台で下手だと「バカヤロー、女優なんかやめちまえ!」って仰るというのを聞いていたので、私は先生のところに行きまして「先生、女優やめちまえと仰ると私本当にやめちゃうんです。もし本当に辞めない方がいいと思うんだったら、そういうことを仰らないでください」と申しましたら「わかった、わかった」と仰いまして、女優を続けてくることができました(笑)。本当に嬉しく思っています。
私の喜劇のシリーズは新しい劇場で続けてまいりますので、続けてご覧いただければという風に思っております。ありがとうございました。」


【過去の授賞式】 第37回