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STORY

物語はある画家のアトリエから始まる―――。

キャンバスに絵筆を走らせているのはその主、禅定寺(ぜんじょうじ)恭一郎(きょういちろう)(山口祐一郎)。

「先生、お茶が入りました」

その声がけに絵筆を止め、家政婦の中村(なかむら)好子(よしこ)(保坂知寿)が運んできた薔薇のお茶を口にする。

「ところで先生、こちらの作品にはいつおかかりになるんですか?」

好子の目線の先にはまっ白のキャンバスが置かれている。

「愛、ねぇ・・・」

女性には不自由しない恭一郎だが、“愛”をテーマに、と引き受けたこの作品にはなぜか取り掛かることができなかった。

そこには誰にも言えない、言ったところで信じてはもらえないだろうある理由があったのだ。

と、ドタバタとうるさい足音が彼の思考を遮る。

「禅定寺恭一郎さんですか?」

息を荒げながら一人の若者がアトリエに踏み込んでくる。

須藤(すどう)冬馬(とうま)(浦井健治)と言います。僕は・・・母を探しに来たんです。母を出せ、今すぐに!」

訳が分からない恭一郎と好子、しかし冬馬と名乗る青年は怒りの表情を携えたまま、恭一郎をまっすぐ睨みつけるのだった―――