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COMMENT

©HIRO KIMURA
石丸幹二
ターテ役

ブロードウェイの初演を観た時の、深い衝撃は忘れられないですね。うねるような物語の壮大さ、そして、多彩なメロディーが飛び交う音楽の豊かさ。

当時まだ30代半ばにもいかない私は、楽曲のひとつひとつが持つ強烈なエネルギーに打ちのめされ、音楽的に難しい曲が多いからこそ、「挑みがいがある、歌ってみたい!」と願いました。楽曲がもつエネルギー。それは、アメリカの異なる人種たちが、与えられた場で必死に生き抜こうとするエネルギーを表しているんだと、今、改めて音楽に触れ、ひしひしと感じています。

登場人物たちは、ふと隣にいたり、街ですれ違ったりする、同じ街の住人。彼らは肌の色が違い、考え方も違う。だから心の中で、いや、面と向かって排除してしまうし、毛嫌いすることもある。

今回、井上芳雄さん、安蘭けいさんをはじめとする心強い仲間たちと共に、異なるバックグラウンドの者たちがひと所に共存する難しさ、大切さを描いていきます。今の世界情勢をみると、その道は想像を遥かに超えて厳しく困難なものかもしれない。けれども、小さくともひとつになれた瞬間のきらめきが少しずつ積み重なり、いつの日か大きな輝きになると信じたい。まずは、冒頭の大合唱を聴いてください。さまざまな民族を演じる出演者全員が心を合わせて歌います。

演出は、藤田俊太郎さん。15年ほど前、蜷川幸雄さん演出の『コースト・オブ・ユートピア』で演出スタッフ時代の彼とご一緒していたはず。その後、演出家として高い評価を得ている藤田さん、再会が楽しみです。

井上芳雄
コールハウス・ウォーカー・Jr.役

出演のお話をいただいたときは、ブロードウェイミュージカルのあの傑作を、遂に日本でもやるのか!という、興奮と喜びがありました。僕自身は直前まで別の作品に出演しているのですが、なんとかして是非とも参加させてもらいたいと思いました。

『ラグタイム』は人種や歴史など、アメリカという国を体現している作品だと思います。音楽も、アメリカのいろんな面が感じられて魅力的です。 

今回共演させていただく石丸さんさんは大学の同じ門下の大先輩なのですが、作品でご一緒させて頂くのは初めてなので、まずそれが何より嬉しいです。やっと共演できる!という喜びでいっぱいです。安蘭さんともミュージカルでの共演は初めてなので、ワクワクしています。お二人ともストレートプレイもミュージカルも両立されている憧れの先輩なので、一緒にお芝居させてもらう中で得られるものがたくさんあると思います。演出の藤田さんとは、『ラヴ・レターズ』以来で、ミュージカルでご一緒するのは初めてです。丁寧にこだわって作品作りをされる印象があるので、楽しみしかないです。同世代の演出家との出会いも、感謝です。

いろんな価値観が変化している今、僕たちがこの物語をどうお客様にお届けできるか。大きな意味があるチャレンジだと思います。僕自身も初めての役柄ですし、想像できないことに挑戦できる幸せを感じています。劇場で、皆様をお待ちしています!

安蘭けい
マザー役

初めてブロードウェイミュージカルを観に行った時、『ラグタイム』が上演されていて話題だったのに観劇しませんでした。今ではなぜ観なかったのか、とても後悔しています。

人種差別や階級差別を描いたストーリーと、ラグタイムという軽やかな曲調との違い、ギャップがとても興味深いと思いました。その当時の、激動の時代を生きた人達のエネルギーを感じるような気がします。

石丸さんとは3作目の共演です。役に対して真摯に向き合っている姿はとても尊敬できますし、舞台人としてもとても信頼している石丸さんと、また一緒に作品を創れる事がとても嬉しく光栄です。井上くんとは2作目ですが、前回はミュージカルではなかったので今回初共演のような感覚で、とても楽しみです。お二方の名前を聞いた時、とても豪華だし、これは凄い作品になるな!と思いました!私もその一員になれることが本当に嬉しいです!

藤田さんとは、蜷川幸雄さん演出の『アントニーとクレオパトラ』に出演させて頂いた時に演出助手をしておられました。それが初めての出会いです。それから演出家としてデビューされてから何作か観させて頂いています。藤田さんの演出はどこか蜷川イズムのようなものを私は感じてしまいます。蜷川さんの世界観がミュージカルの舞台に合った時、とても嬉しく感じましたし奇跡を感じました!今回初めて演出を受けるのがとても楽しみです!

今までなぜ日本で上演されてこなかったのか、不思議でならないミュージカルです。満を持して上演される『ラグタイム』カンパニーの一員として携われることを本当に光栄に思っています。

皆様の期待に応えられるよう精一杯頑張りますので、どうぞ楽しみになさっていてください!

©KEI OGATA
藤田俊太郎
演出

世界中で上演を重ね、各国の劇場で大きな感動を与え続ける傑作ミュージカルの日本初演を演出できることに心から幸せを感じています。まさに2023年の「今」上演するのに相応しい多様な価値観を持つ、名曲揃いの壮大な作品に立ち向かい挑戦できることを誇りに思います。史実とフィクションが見事に交錯した原作の小説を執筆したE・L・ドクトロウ、1998年のブロードウエイでの公演を創った素晴らしいクリエイター達に想いを馳せると胸が熱くなります。「ラグタイム」は、黒人音楽を基礎として19世紀末から20世紀初頭に従来とは違う、ラグした(ズレた)リズムのシンコペーション、時に裏拍の強調を特徴として生まれました。聞き慣れないのにどこか懐かしくて、普遍的な魅力を持っていると感じます。また同時に、出来事の裏に潜む、もう一つの真実を暴いているように美しく、官能的な音楽でもあると思います。

様々な出自、ルーツを持つ魅力溢れる多彩なキャストの皆さんとご一緒できることに今から興奮しています。日本のミュージカルに力を尽くし、輝き続ける石丸幹二さん、井上芳雄さん、安蘭けいさんを心から尊敬しています。舞台の設定である20世紀初頭アメリカ合衆国へと一緒に旅立ち、共に強く生きたいと思います。

本作で描かれる3つのルーツ。差別され続ける黒人達。移民のユダヤ人達。汚れない白い衣裳を身に纏った特権的な白人達。産業の急速な発展・第一次世界大戦に向かう激動の時代の中で、登場人物の間には、壁があり、暴力があり、時に分断し、そして、互いに融和・受容を試みます。歴史のうねるような迫力、新時代を迎える旋風を舞台上に創出したいと思っています。

様々なシーン、ドラマを通して、全ての人物が新たな思想や考えを持つようになります。新しい芸術が生れ、音楽、豊かなメディア産業が誕生します。上演中に何度も歌われるフレーズ、「The Wheels of a Dream」。夢の乗り物、もしくは夢の車、もしかしたら夢の地球号という乗り物に私たちは同じ想いを抱きながら乗って、一緒に進むことができるのか。

およそ100年前を生きた人々の物語は、100年後を生きる私たちに、その夢は叶ったのか、と問いかけます。『ラグタイム』は遠い国の遠い過去の話なのではなく、特に2020年以降を生きる私たちの現在形の作品なのだと感じています。決して悲しいシーンばかりではなく、未来への夢が詰まったエンターテインメントを是非、楽しんでいただけたらと思っています。お客様に心からの愛を込めて、劇場でお待ちしております。