日生劇場2020年2月公演

絢爛豪華 祝祭音楽劇『天保十二年のシェイクスピア』

『天保十二年のシェイクスピア』
2月27日(木)13:00開演の部
高橋一生さん カーテンコールご挨拶

新型コロナウイルス感染状況と政府の感染症対策の方針に鑑み、やむを得ず『天保十二年のシェイクスピア』は2月27日(木)13:00開演の部を持ちまして公演を中止とさせて頂きました。
本公演、主演を務めます高橋一生さんより公演終了後にお客様へのご挨拶をさせて頂きました。下記ご挨拶全文でございます。

本日はご観劇いただきありがとうございました。

本日、皆様にお伝えすることがございます。

ここ最近、世界中で罹患者を増やし続けているコロナウイルス禍を受けての話です。

僕たちの座組も開幕当初からずっとこの状況を懸念しておりました。公演が始まってすぐに、東宝演劇部や日生劇場の方々と、お話をして参りました。早い段階でお客様に注意喚起を促すようなアナウンス、劇場出入り口での消毒等、微々たることですが、僕たちの方でも出来ることを、できる限りのことを尽くしてきたつもりです。

ですが、東宝演劇部、日生劇場がお話になりまして、本日をもって『天保十二年のシェイクスピア』の公演を中止するという発表を受けました。

東京公演の千穐楽、大阪の大千穐楽までは、あと少しでした。キャスト・スタッフ一同最後までなんとか辿り着きたいと思っておりました。今回の決定、僕なりに解釈いたしますと、公演がはじまってから、罹患者が日に日に増えているこの状況下で、自分たちに何ができるのかということを、きっと考えていらっしゃったと思います。最悪の事態を考えたと思います。仮に出演者が罹患していたら、同じ場所にいる誰かがウイルスに罹患していたら、劇場という空間でウイルスをうつし合ってしまうかもしれないことを危惧して、ということもあったと思います。東宝演劇部も日生劇場も苦渋の選択だったんだと思います。こういう結果になってしまったことは、心の底から無念としか言いようがありません。

ここからは僕の主観です。

僕たちがやらせて頂いている「お芝居」というものは、木場さん演じる〈隊長〉が前口上で仰っている通り「趣向」です。「娯楽」といってしまえばそうなのかもしれません。いつの時代も、僕の知り得る限り、多くの場合において、有事の際、芸術やお芝居などはトカゲの尻尾切りのように世の中から捨て置かれてしまうような存在だと思っています。しかし、僕の思いとしては、この「娯楽」というものが人の心というものを豊かにする重要なものなのではないか、と思っています。

娯楽というものが世の中からなくなってしまったら、きっと皆さんの心は、お芝居をさせていただいている僕らも含め、「豊かな心」がどんどん失われていってしまうと思います。

公演中止という判断をせざるを得ない状況にまでなってしまいましたが、僕の考えといたしましては、次また皆さまと「お芝居」の場所で会えること、それはまた〈隊長〉の言っていた通り「想像」をする場所で会う、ということなんです。

僕はこの公演を通して、〈三世次〉という役を通して、もしかしたら世間では本当に悪い奴だと糾弾されてしまうような人も、どうしようもない事情でそうなってしまったのかもしれないと考えられる「想像力」を、改めてこの作品から頂きました。そんな力を共有できたら、豊かな心づくりをし合えたら嬉しいなという思いでもお芝居をして参りました。お芝居の場所はそういった想像力を共有する場所だと思っています。

今日の発表は、非常に残念ではありますが、またこういった場所で、皆さまと想像力を共有できるようになるための措置であると僕は願っています。

本日は本当に、本当に心の底から、皆さまにも、今まで観てくださった全ての方々にも、この場をお借りしてキャスト・スタッフ一同、感謝したいと思います。

本当にありがとうございました。