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スペシャル
Special

vol.1

2021年2月シアタークリエ公演『ローズのジレンマ』を演出する小山ゆうなさんにお時間をいただき、今回オフィシャルインタビユーを行わせていただきました。演劇界で注目される小山ゆうなさんにとって、本作が“クリエ作品初演出”になります。

2020年12月上旬 東宝本社にて
 聞き手:東宝演劇部宣伝スタッフ

──それでは、初めてのシアタークリエ作品の演出を手掛けられるにあたり、意識されることからまずはお聞かせください。
シアタークリエで公演をやると聞くと安心して見に行ける、という想いをずっと持っていました。(シアタークリエでは)ちょっと華やかで、品があって、落ち着いていて・・という作品をずっと観てきているので、恐らくそういうテイストのものを求められているんだろうなと思うんですけど、“クリエ(作品)”だから、と安心していらっしゃるお客様もたくさんいらっしゃると思うので、そのお客様たちに喜んでいただけるような作品作りをしたいなと思っています。
──小山さんから見て、なんとなく“劇場のカラー”というものがあるのでしょうか?
他にない劇場ですよね。あの立地でありながらコンパクトな空間で、すごく観やすいですよね。
──ありがとうございます!それでは、ニール・サイモン作品の魅力、その中でも『ローズのジレンマ』という作品の特徴や魅力をお聞かせください。
ニール・サイモンの作品は大好きで、翻訳してから改めて思ったんですけど、すごく良くできていて…何目線なんだって話ですけど(笑)。セリフも粋だし、オシャレでユーモアに溢れていてそのベースは『ローズのジレンマ』にもあるのですが、ちょっとこの作品が特殊なのは、テネシー・ウィリアムズが亡くなる前に最後に「亡霊劇」と名付けて発表した『夏ホテルの装い』(Clothes for a Summer Hotel 1980年)という作品があったんです。これはアメリカを代表する実在の作家夫婦であるフィッツジェラルド夫妻をモデルにしたお芝居で、テネシー・ウィリアムズが自分の資金で最後に上演して14回の公演で打ち切りになってしまい失敗に終わったという作品なんですけど、それをニール・サイモンが知っていて、それを意識して書いていると言われています。テイストが従来のコメディ色だけではなく、彼自身の人生感や作家としてどうかということと、テネシー・ウィリアムズ作品への想いが乗っている作品なので、その辺りの塩梅をどんな風に表現していくのかというのが大事かなと思っています。
──大地真央さんは、シアタークリエでもストレートプレイを何作も主演を務められています。そんなローズ役を演じる大地さんについての印象からお聞かせいただけますか?
“スターさん”で、雲の上の方というイメージで、学生時代から大地さんの作品を観ていますし、大地さんとご一緒するにあたって、私で大丈夫だろうか?と思って、他の人にも相談させてもらいました。大地さんが続けていらしたクリエでの公演の中で求められる事、目指される事もおありかと思うので、それに応えていけるのかいろいろと考えましたが、実際お目にかかったら気さくに話してくださり、即座に出されるアイディアがすでにすごく面白く素敵な方だな、と改めて思いました。
──常に役のことを考えていないと、そういうアイディアって浮かばないものですから、頭の中には常にローズがいるのかもしれないですね。それでは続いて、アーリーン役の神田沙也加さんについての印象はいかがでしょうか?
ミュージカルを客席からは観たことがあったのですが、実際お目にかかって、「かわいい」ってこういうことをいうんだな!と(笑)。柔らかいキラキラしたオーラを放っていらっしゃって。大地さんとも仲良くていらっしゃるという事なので、それがどういう風に作品に作用するのかわかりませんが、楽しみですね。
──続いて、クランシー役を演じる村井良大さんについての印象をお聞かせください。
村井良大さんはきっとお芝居がすごく好きで、真摯に向き合い、ずっと考えられていらっしゃる方だと思うので、たくさん話しながら作り上げていきたいと思います。
──思った疑問をたくさん演出家にぶつけるタイプなのかもしれないですね。
それは演出家としてはとてもありがたくて、それが一番大事なことだと思っています。
──それではウォルシュ役を演じる別所哲也さんについてはいかがでしょうか?
コロナの影響でなくなってしまったのですが、「チェーザレ 破壊の創造者」という明治座の作品でご一緒したことがあります。稽古が終わっていよいよ劇場入りする前の日まで一緒で。もちろん偉大な方ですけど、隣に来て、「あのシーンって、こうだと思うんだよね」と熱く語って下さったり、別のメンバーの稽古で、もう別所さんは帰ってもいいタイミングなのに残っていらして、その時は盆のセットで、スタッフ側が回らなくてはいけなかったのですが、狭いスペースも大きな身体を小さくして一緒に回ってくださったり(笑)。 情熱のある方で皆に尊敬されていました。特殊な役ですし、どのように別所さんが演じられるのかが今からとても楽しみです。
──「ローズのジレンマ」の演出をするにあたって、こだわりたい点や演出プランがあれば教えていただけますか?

一番は、このメンバーなので、それぞれの方の魅力が感じられればいいなと思っています。 普段見たことのないその方だったりとか、でも本質的な部分ではその人なんだよね、っていうことなのかもしれないけれど、4人のそれぞれの力が拮抗しあい、魅力が出て素敵になる、それだけでお客さんは楽しいんじゃないかなと思います。

今の時代で、それでも舞台を見に来てくださる方は何を観たいのかな、とすっと考えているんですけど、私自身弱い人間なので、そんなに辛すぎるお話は見たくないと思っていて。もちろん芸術を作るために痛みも伴う話ではあるんですけど、あくまでも、あたたかさとかユーモアが感じられればいいなと思います。

──ありがとうございます。それでは最後に、お客様にメッセージをお聞かせください。
華やかな4人の方の共演でもあるので、楽しみに劇場に来ていただいて、役者4人の新たな顔を見つつ、笑いあり涙ありの舞台を楽しんでいただければと思います。
こやま・ゆうな
1月26日生まれ、ドイツ・ハンブルク出身。古典翻訳劇を中⼼に上演するシリーズ、こどもと⼤⼈のためのシリーズを上演する雷ストレンジャーズ主宰。
最近の主な演出作品:『チック』(’17・’19)、unrato『ルル』(’19)、『願いがかなうぐつぐつカクテル』(’20) 、劇団四季『ロボット・イン・ザ・ガーデン』(’20)など。
2017年小田島雄志・翻訳戯曲賞受賞。 2018年読売演劇大賞優秀演出家賞受賞。2018年サンモールスタジオ最優秀団体賞受賞。